「…え、う、うん」


ぼくはとりあえず又兵衛にそう答えると再びなっちゃんの方に視線を移した。


微妙なドラムロールの強弱が晴れ渡った空に響く。


僕は、いつの間にかぽかんとなっちゃんを見詰めている自分に気が付いて、急に頬が紅くなるのを感じた。


同時に又兵衛と視線が合う。


「あ…べ、別に、そんなんじゃぁないからね。うん…」


僕は妙に大袈裟に又兵衛に向かって何かを否定した。


否定してみて気が付いた。何を否定したのだろうか…


「しかし、上手いもんだなおい…」


又兵衛が、ちょっと感心した表情で僕に無かって話しかけた。


「…うん、じょうずだね…」


僕はなっちゃんをぼんやりと見つめながらそう答えた。