周りの風景が、爽やかな草原から見慣れた教室の風景へと戻った。そして僕は、又兵衛にせかされて楽器をケースにしまうと、ちょっと後ろ髪引かれる思いで教室を後にした。


「ちょっと位、平気なのに…」


僕は教室を振り向きながら音楽室の楽器倉庫へと向かった。


…そうだ、英二を誘って帰らなければ。


僕はそう思って英二が何時も練習している教室に向かって歩き出した。

         ★

教室の外からでもトランペットの音は良く分かる。伸びの有る綺麗な高音を響かせているのは英二だと分かる。


彼の音は県内のブラスバンド部で比べれば一位、二位を争う事が出来る音だ。


英二の目標は音楽大学に合格して4年間トランペット漬の生活をして出来れば何処かのオーケストラに所属する。