二人の極上の食事を横目に、僕は自分の手元を見た。


そこには、パンが二個ちんまりと転がっているだけ……


侘しいを通り越して、ただ虚しかった。


「刀矢、その黒いのは何だ。何やら、立派な穴が空いてるが」


穴夫に言われて、僕は黒色のドーナツ型のパンを守るように抱え込む。


穴夫に『使われたら』堪らない。


「これは『GO!GO!タイヤパン』だよ。お願いだから、変な目で見ないでよ」


「パンごときに発情するわけあるまい。俺のモツはそんなに安くないぞ」


いや、少なくとも僕にとってはパンの方が余程価値がある。


大体、穴夫はそう言いながらも頬を染めてタイヤパンを見つめてるじゃないか。


早く食べてしまおう。


タイヤパンを袋から取り出し、手に取るとパンの弾力がはっきりと伝わる。


そして、何やらゴム臭い。


このタイヤパンはいかにタイヤに近付けるかに重きを置いたパンらしいが……


そのコンセプトはいかがなものかと思う……


ゴム臭さを我慢し口に入れると、これがまた噛み切りづらい。


咀嚼しててもクチャクチャと言うだけで味もしない。何を食べているか分からないな……


「不味そうなのデス……」


僕は素直に頷いた……