このまま死んでもいいデス、みたいな顔で定食を頬張る不知火から視線を外す。


次いで、弁当の蓋に手を掛ける穴夫の方を見る。


透明な蓋が取り除かれると、途端に漂う香ばしい香り。


「穴夫……それ、なんて弁当なの?」


「『和が満載弁当』だ」


確かに、天ぷら、煮物、鮭などと和食が盛り沢山の弁当だ。


穴夫がおもむろに芋の天ぷらを掴み、口に放り込んだ。


豪快に噛む穴夫の口から、パリパリッという音が聞えてくる。


まさに作りたてといった感じだ……


「ふむ。素材をそっくりそのまま味わえる……、つゆなどは必要ないな」


穴夫を口の端を少しだけ持ち上げる。


非常に満足している時の穴夫の癖だ。


そして、次に煮物のうち、高野豆腐に手を伸ばした。


弁当が水浸しにならないよう、煮汁は入っていない。一見すると……だが。


穴夫が高野豆腐を噛んだ瞬間、ドバッと煮汁が噴出した!!


高野豆腐にたっぷりと煮汁が染み込んでいたのだ。


「豆腐に染み込ませた後まで考えられた醤油加減……、絶妙という他あるまい……」


僕はゴクリと喉を鳴らす。


口の中は涎で一杯になっていた。