「そうデスね。こんな駄犬をいつまでも相手にしていたら、せっかくの食事が冷めてしまうデス。それでは、いただきますデス」


「好き勝手言ってくれるよ、まったく……」


と、愚痴りつつも僕の視線は不知火の定食に釘付けだった。


彼女の箸を持つ繊細な指が少し力を入れるだけで、まるで本当の豆腐のように割れるハンバーグ。


その割った一片を持ち上げると、トロ~リとしたアンがゆっくりと滴る。


豆腐ハンバーグは不知火の小さな口へと吸い込まれていく。


咀嚼する彼女の顔が至福のものとなる。


「ど、どう? 豆腐ハンバーグは……?」


不知火の表情を見れば旨いというのは確実だ。


それでも僕は、意見を聞かずにはいられない。


「最っ……高デスね。アンの甘さもさることながら、練り混んである野菜を噛んだ時のシャキシャキ感が堪らないデス!!」


彼女は次いで、御飯に手を伸ばす。


白く輝く米は、黒い器にとても栄えていた。


「このお米! いつ食べても美味しいのデス! 本間君、お米は甘いということを知っていますデスか!?」


ご存じありません。


ですので、少し分けて頂けませんか……?


もちろんにべもなく却下されたけど……