「それで、結局『マズパン』片手に無様に敗走したのデスね。言い訳のしようのない負け犬っぷりなのデス」


僕、本間 刀矢(ほんま とうや)はなじられていた。


相手は学園でも五指に入るほどの美少女であり、僕の精神的ダメージは計り知れない。


なじる美少女、不知火 閖(しらぬい ゆり)は僕の友人だ。


不知火はまだ言い足りないのか、嬉々として罵詈雑言を撒き散らす。


「『刀矢』という屈強な名前なのに弱い男なのデス。名前負けもいいところデス」


「そのくらいにしておいてやれ、不知火」


容赦のない責めを止めてくれたのは、これまた僕の友人の堀 穴夫(ほり あなお)だった。


「刀矢が縮こまっている。後ろの穴まで縮こまってもらったら大変だしな」


余計な一言さえなければ、とても有り難いのだが……


穴夫は無類の穴好きなのだ。


それこそ、そこに穴があるから入る、というほどに。


さて、僕を含めた三人は食堂の一画を陣取り、昼食をとろうとしていた。


不知火はバランスの取れた、見るからに美味しそうな豆腐ハンバーグ定食を。


穴夫はボリューム満点のプラスチック容器の弁当を。


そして、僕は……


貧相なパンが二個……通称『マズパン』を。


それぞれが獲得してきた食糧を食べるところであった。