最期を看取れなかった。

親不孝でごめんな、母さん。


病室に着けばそこにいたのは姉さんだけだった。


「清、遅いって。」


姉さんはそう言って力無く笑った。

母さんの顔を見て力が抜けた。


なんて綺麗な顔してるんだろうって。まるで笑ってるみたいな死に顔だった。
あんた、娘にしか最期を看取ってもらえなかったんだぜ?
親父にも看取ってもらえなかったんだぜ?

それわかって笑ってんのかよ・・・。

ほんと、母さんは馬鹿だよ。


「親父は?」

「他の患者さんとこ。今日、急患ばっかりで忙しいんだって。」


姉は妙に落ち着いていて、それになんだか腹が立った。

急患って・・・どういうことだよ。


腸が煮えくり返っている所に、親父がやって来た。


「松子・・・。」


そう呟いて傍に寄ったもんだから、俺は母さんと親父の間に割ってはいる。


「触んじゃねえよ。」


俺がそう言って睨めば、親父は表情一つ変えずに俺を見た。


「外出ろ。」



そうして親父を押しやって廊下へ出した。