さっき、エリシアがやったように扉が開いた。ただ、今度は扉は閉まる事はなかった。床に横たわっている。
「なんだ、お前達は?いったい、何しに・・・。」
言い終わらないうちに、リーグの父は気を失わされてしまった。
「おじさん!」
エリシアは駆け寄ろうとしたが、黒ずくめの男に邪魔された。そして、朱ずくめの女はエリシアの事を羽交い締めにした。
「何するのよ。」
「・・・。」
女は何も答えない。必死に振り解こうとするが、女とは思えない力だ。エリシアも男勝りだが、この女はそれを上回っている。
「こいつ、何者?」
動揺していた。それが、そのまま口から出てきた。とにかく、どうにかしなきゃエリシアは思った。
「えっと、えっと・・・。」
<そうだ、言術。まだ、少ししか使えないけど言術を使えば、このくそ女をやっつけられるかも・・・。>
息を吸い込んだ。大きく、大きく、この世のすべてを吸い込むかのように、息を吸い込んだ。
・・・それだけだった。
エリシアが言術を唱える事はなかった。

<姉さん・・・。>

「・・・誰?」
声が聞こえた気がした。アイワイは周りを見回した。しかし、誰もいない。
「気のせいか・・・。」
また、中庭のベンチに腰掛け、大好きな本を開いた。