気がついたら目を閉じていた。
それをゆっくり開く。
何かあったのだろうか?世界が静寂に包まれているような気がした。
「リーグ?」
あまりの静けさに不安になった。
リーグは無事だった。やっと、血を拭う事が出来たのか、周りの様子を伺っていた。

「うわあああああ。」
リーグが叫んだ。
「・・・何?」
魔法は解けたとはいえ、アイワイは憔悴していた。起き上がれず、その場に横たわっている。
「ダメだ。起きちゃダメだ。」
リーグはアイワイに叫んだ。リーグのものすごい形相に、アイワイは素直に従う。

これで見えない。
今、リーグの前には、惨たらしい死体があった。何かに喰いちぎられたような跡が無数にある。ねねと思われる死体は、遠くに右手を、リーグの足下にはねねの頭をと、肉片を散らかしていた。
「何があったんだ・・・。」

まさか、ナイフを突き立てたからといって、爆発するような事もないだろう。訳がわからなかった。

「リーグ、大丈夫?」
「あぁ。」
あんな事があった後だから、言葉少なげだ。
アイワイさんは、あれを見ないように、ブリアさんがうまく“リストランテ ボンボヤージュに向かう”に乗せてくれた。
知らないでリーグに近づいていたら、僕もリーグみたいになっていたに違いない。
ただ、僕も心に傷を負ってしまっていた。人殺しの業は、一生消える事はないだろう。

二人とも、都会で、知らない世界を知ってしまった。知らなくてもいい世界を知ってしまった。