<うまく出来るかどうかなんて、わからないけれど・・・やるしかない。>
想いを練った。
<一箇所、一箇所に想いを集中するんだ。>
狙いを定める。今度はさっきみたいにならないように。
「lot、lot。」

ひとつだけ、創る事が出来た。

殻が包んだ。透明な、そして強固な殻が出来た。
それで、僕は、あの男を包んだ。

暴走した火の玉は、殻に閉じこめられ跳ね返った。何度も、何個も跳ね返った。そのうちの一個が、男の左手首を潰した。
「ぎゃああああああ。」
傷口は潰れるだけでなく、焼き焦がす。流れ出た血は一瞬で乾き、独特の臭いを殻の中に充満させた。
痛みが更に魔力を暴走させる。
殻の中は火の玉が充満した。
飛び散る血は、殻に付くなり乾いていく。そのせいで、透明さを失い中の様子を伺い知る事は出来なくなっていった。
男の叫び声だけがこだまする。
「うぎゃあああああああああ。」
永遠に続くと思われた叫び。それが聞こえなくなると同時に、殻も崩れていった。

第二言を使うくらいだから、男と僕の距離はそれなりに離れていた。なのに、なんだろう・・・この厭な臭いは。煙と一緒に、僕の鼻をかすめていく。
「うっ。」
戻しそうになる。
同時に気がついた。
<僕は人を殺した。>
魔法使いだって、人だ。この臭いは人を殺した結果の臭いだ。心が震える。体の自由が利かない。
<人殺し。>
もう一人の僕が叫んでいた。