まずは様子を伺った。
見る限り、火の玉はまだまだ大きくなっていくようだ。
「ブリアさん、あれ、まだまだ大きくなりそうだよ。」
「みたいだね。あんなの、旦那様でも出来るかどうか。少なくとも言術の類ではないと思う。あれが言術だとしたらものすごい憎しみって事だ。たぶん、あれは魔法・・・魔法使いがやっているんだと思う・・・。」
黒ずくめの男が火の玉を作っているように見える。と言う事は、あの男が魔法使いって事なのだろうか。
「あの太った男が魔法使いなの?なんか、イメージと違うけど・・・。」
「もしかしたら、おとぎ話に出てくるような魔法使いをイメージしていたのかい?あんなのは嘘さ。本当の魔法使いは、いくつかの流派があってね。それぞれに決まった衣装がある。あそこにいる男は黒ずくめ、奥にいる・・・お嬢様の前にいる女は朱づくめだろ。確か、あんな衣装を着なければいけない流派があったはずだ。」
僕は焦った。一人の魔法使いなら、どうにかなるかもしれない。けど、二人を相手にしなきゃいけないとなると正直自信がない。
「あの奥にいる女も魔法使いなの?」
「衣装からすると、たぶんそうだと思う。」

こんな話をしている間にも、どんどん火の玉は大きくなっていく。
それが止まった。やばい感じがした。
そして、グルグルと回転し始めた。確実にリーグを狙っている。

僕は走った。何か考えたがあった訳じゃない。
それでも走らずにはいられなかった。

「はあああああああ。」
ありったけ息を吸い込んだ。そして・・・。
「lot。」
火には水。それが僕の中での決まりだ。だけど、火の玉となると水でも敵わない気がした。だから、安直かもしれないけど、こうした。
氷山。そう氷の山を火の玉にぶつけようとした。
「な、なんだ。」
突然、目の前に現れた氷山に、男は度肝を抜かれていた。
「いっけえええええ。」
思いを言葉に乗せた。どこまでも、どこまでも氷山は飛んでいく。そう思っていた。