キラは彰
ルークは猛流
なんだと感じた。
オウリの記憶では二人とは幼い頃から一緒にいた。
私たちと同じ。
「彰、猛流、ずっと一緒にいてください」
と朝おきたとき、二人に頭を下げた。
二人は目を丸くしてたけど、良いよと言ってくれた。
学年が一つ上がった。
面倒臭い位に担任に進路のことを聞かれた。
はっきり言えば、働かなくても食べて行ける金はある。
やりたいこともない。
余命宣告をうけている自分は明日すらも霞んで見える。
ぼんやりとした私に担任は大学進学クラスに入れた。
あろうことか、土方くんと一緒のクラス。
チャンスなのか罰ゲームなのか分からない。
「直江、どこに行くんだ?」
「ちょっとそこまで…」
「授業が始まる。早く席につけ」
少しでも授業をサボろうとすると、すぐに引き戻された。
毎日、毎時間座っていると肩がこってくる。
安らぐ場所は、校舎裏の庭。
冬に手入れをしたおかげで、今は綺麗に花が咲いている。
そこでお茶を飲むのが日課だ。
「桜理ちゃん、お菓子食べるかい?」
球根をわけてくれた用務員さんとも仲良くなって、二人で庭を眺めたりしている。
「はい、いただきます。桜も綺麗に咲きましたね」
放課後をのんびりと楽しんでいると不粋な声が
「直江、ここにいたか。ちょっと来い」
「風紀委員の活動は今日はないはずでしょ」
「違う用だ。早く来い」
違う用件だというのに態度がでかい。
「私は風紀委員の時は副会長に従いましょう。でも、風紀委員は関係ないのに、何で命令系!あんたは私のご主人か?私を性奴隷にでもする気!」
「誤解をさせる発言をするな!性奴隷のくだりはいらねぇだろ」
「はい!こういう時は何ていうの?土方くん」
そういうと、土方くんはいすまいを正して、
「お願いがあるので、付いてきてください」
と頭を下げてきた。
嫌だというS心を抑えて、ベンチから腰を上げた。
用務員さんに頭を下げて、土方くんについて歩いた。
不意に土方くんが私の髪に触れた。
「何?」
思わず身体を引いてしまった。
「悪い。髪についてたから」
土方くんの手には桜の花びらがのっていて。
「ありがとう」
「ん。桜理って名前だけに桜はお前が好きなんだな。桜の花びらが髪についてる奴、見たことねぇよ」
なんて恥ずかしいことをサラッと言いのける男だと思った。
恥ずかしくて言葉が出なかった。
「どうかしたか?」
「あんた背中に気をつけなさい」
それだけを言って足を進めた。
「どういう意味だ」
こういう男は、知らないうちに女を惚れさせて、三角関係になったあげく、背中を刺される可能性がある。
私が言えるのはそこまで。
そんなにお人よしの人間じゃない。
私が連れて来られたのは、剣道部の道場だ。
「男くさっ」
ブレザーの袖で鼻を覆った。
「仕方ねぇだろ」
こんな臭い所で何をさせる気なのだろう。
「政宗がお前の家で竹刀と木刀を見たそうだ」
「護身用よ。一人暮しは物騒だから」
「かなり使い込んでたらしい」
「知らない」
「最初にぶん投げられたときに、手に剣ダコあった。心得ぐらいはあるだろ」
心得はないわけはない。
彰と猛流と先生の剣道道場に通っていた。
二人は高校でも部活で続けている。
私は中学一年で止めた。
「もし心得があったとして何?」
「新入部員の相手をしてやってくれ。こっちは地区大会まで時間がないから。剣を持って構えてるだけで良いから」
「私、剣道部のマネージャーでもなんでもない」
「じゃあ今日から入部な。マネージャーで、マネージャーがいなくて困ってたんだ。頼む」
頼むって言う割には態度が大きい。
「直江、来てくれたか!やっぱり女子がいると花やぐな」
藤堂くんがこっちに歩いて来た。
胴着を着ても漂うオッサン臭は拭えない。
「私、やるなんて言ってない」
「直江、頼む」
「メリットがない」
「進学の内申書に書かれるから良いだろ」
そんなの私にはメリットでもなんでもない。
「興味ない」
むしろデメリットばかりが増える気がする。
時間がなくなる。
私も暇じゃない。
「直江先輩、こういうのどうですか?土方さんが直江さんが部活に出る日は飲み物を買うってことでどうですか?」
秋田くんが私の後ろからひょっこり現れた。
「何でオレが!」
「だって土方さんが直江さんが適任だろうって」
「お前が直江の家に木刀と竹刀があるって言ったから」