芹澤さんが家から出て行く所を私たちは冷めた顔をして見ていた。
「君達には見られたくないところだけを見せてしまうな」
「勉強になりますよ。ダメな大人の見本です」
「芹澤だけでも許してはくれないだろうか?彼には君たちと同じ年の子供もいるんだ…。子供と同じ年の子供に敵意を向けられ続けられるのは辛いんだ。君たちのことを自分の子供の様に考えているから」
「「「で?」」」
だから何?
と秋田警視総監を睨みつけた。
私たちを自分の子供と思うおうがそれは、芹澤さんの勝手。
私たちには関係ない。
だからって芹澤さんを許す理由にはならない。
人の記憶は、その人物を思い出すと、付属の思い出も一緒に思い出すものだ。
「あの人があんなこと言わなきゃ、喜べたかもしれませんけどね」
。もう帰って下さい。疲れたんで
「じゃあ、例のものはいつも通り」
秋田警視総監は帰って行った。
しずかになった家で、3人で手を繋いだ。
「オレらがお前のそばにいる。オレたちが桜理の家族だ」
猛流の言葉に私は涙を流した。
二人がいてくれればそれで良かった。
夜は、三人で眠った。
手を繋いで、二人に守られているようで、すぐに眠りについた。
「キラ、まだ捕まってなかったのね」
「まぁな」
その夜歌っていると、懐かしい視線を感じた。
その視線をたどると、カウンターに紙の長い女が座っていた。
歌い終わると、オウリはカウンターに向かい、女の隣に座った。
「オレが簡単に捕まるわけがないだろう」
声は男のものだが、傍からみれば女同士の会話に見えるだろう。
「ルークは?」
「あいつも元気だと言った方が良いな」
「そう」
「最近、お前が軍の男と親しいという話を聞いたが」
「バカバカしい。私の軍属嫌いは知ってるでしょ」
「まぁな」
「ここの客なだけ」
「そうか。オレはお前が穏やかであれば良い。だが、ルークには気をつけろ、あいつはお前をあちらに引き戻そうとしている」
オウリは少しだけ肩を震わせた。
「あんたもそうなんじゃないの?」
「お前がいれば計画は大きく前進するだろうが、お前が小さい子供と一緒にいるところを見たらその気は失せた」
「そう」
オウリはキラの横顔を見た。
「オウリ、歌を聞かせてくれ。一曲聞いたら帰ることにしよう」
オウリはステージに立った。
友のために。
いつかまた
この世界
優しさが
満ち足りるだろ
いつかくる
この世界
安らぎのメロディー
歌を聞くと男は帰って行った。
今までの思いが巡った。
幼なじみのキラとルーク、違えてしてしまった道だけど
大切なことは変わらない
でも私の手にある宝物に手を出したら許さないとオウリは歌に込めた。
キラにはきっと届いたはずだ。
「今日は歌わないのか?」
その日の店が終わる間際にカインが来た。
客のまばらの店内、店の端においてあるピアノを弾いていると、カインはグラスを持って側にきた。
「あんたが来る前に歌ったから」
「そうか。何かあったか?」
「別に、」
「ならいいけど。今日はお前の雰囲気がなんか違う」
「何もない。それよりあんたがなんかあったんじゃないの?血の臭いがする」
「あぁ。仕事でな、指名手配のテロリストが町に入り込んだって情報がはいってな」
キラ・セーレンとルーク・ティアックの二人だ。
とカインは言った。
「そう」
「気をつけろ」
「どうして私に言うの?」
「美人にはテロリストも手を出したくなるものさ」
「馬鹿ね」
「男は馬鹿な生き物さ」
オウリの顔に笑顔が浮かんだ。
「こっちに来て。手当するから」
そういって、オウリは店の奥にカインを連れて行った。
「怪我してるとこ見せて」
オウリに促されてカインは左腕を出した。
包帯が巻かれていて、少し血が滲んでいる。