私は自分の部屋に帰るなり、制服から着替えることも忘れ、机の引き出しから缶箱を取り出した。
中に入っているのは、淳一との思い出の品々だ。
淳一にもらった些細なもの。
デートで行った場所のチケットの半券。
そして、一度だけ撮ったプリクラ。
それらをぐしゃりと握り締め、ゴミ箱へ叩き付ける。
奥歯を噛み締めたまま、袋の口をしっかり縛った。
ゴミ袋と携帯を持ち、キッチンへ。
母が夕食を作っているが、構わず蓋付きのゴミ箱の前へと足を進めた。
「さくら。どうしたのそんな怖い顔して」
「ちょっと、嫌なことがあって」
「そう。ご飯できるから、着替えてきなさい」
「うん」
ペダルを踏んでゴミ箱の蓋を開け、部屋から持ってきた袋をためらいなく放り込む。
淳一との思い出の品は全部捨てる。
きっともっと早くこうしておくべきだった。
部屋に戻ったらスマートフォンに残っている画像や動画も消してしまおう。
思い出だからと大切にしていたら、どうせまた同じことを繰り返す。
二年目の夏は、まだ始まったばかりだ。