大きな声を出してしまったため、周囲の注目を集めてしまった。
周囲を見ると、一瞬、淳一とも目が合う。
無意識に彼のいる方へ目を向けてしまったのだ。
不可抗力とはいえ、己の浅はかさが恥ずかしい。
「墓穴掘ったな」
「掘ってません。否定しただけです」
私は笑う担任を一睨みした。
彼はむしろそれを楽しむように話を続ける。
「俺の推測を聞くか?」
「聞きませんよ」
「まぁ聞けよ」
「私の意思は無視ですか」
「失恋相手が教室の中にいたんだろ」
――バサバサバサ……
鋭い担任の推測に驚いたと同時に、私の背後で何かが落ちる音がした。
「あらあら奥田先生、大丈夫ですか?」
「すみません」
淳一声に、思わず全身が強ばった。
何かを落としたのは淳一だった。
床にノート類が散らばっているが、人気者の彼の回りには、私の手伝いなど不要とばかりに何人も集まり、ノートを拾い集めている。
まさかと思うが、私と佐渡先生の話を聞いて動揺したのだろうか。
そうだとしたら、淳一だって私とのことをなかったことにできていないのでは。
私は彼の背中を恨めしげに眺め、佐渡先生の方を向く。