カリカリカリ……

教室に筆音が響く。

淳一が教室にいると思うと、気になって集中できない。

なんとか問題を解き進めるが、意識が勝手に淳一の方へと向かってしまう。

ガタッ……

淳一が椅子から立ち上がる音がして、意識のほとんどを彼に向けていた私は、驚いて体を震わせた。

暇をもて余したのか、淳一は教室を巡回しはじめた。

やめてほしい。

ますます問題に意識が向かない。

どんどん彼が近づいてくる。

ドキドキして、ペンを持つ手までが脈を打っている。

もうすぐそばまで彼が来たとき。

「ぶぇーっしょい!」

突然教室に大音量で響いたくしゃみに驚き、私は持っていたシャープペンシルを落としてしまった。

変なくしゃみに笑いが起きる。

犯人は鼻をぐすぐす言わせている淳一だ。

淳一は私の横で足を止め、かがんでシャーペンを拾う。

ふわっと淳一の匂いがして、胸がきゅっと詰まり、痛む。

鼓動の音が全身に響いている。

試験中の静かな教室に響いてしまいそうだが、どう抑えていいかわからない。