「高校の卒業はな、人生の中でも一番変化の激しいターニングポイントなんだ。ここから生活が劇的に変わるぞ。よくも悪くも自分次第。楽な方に流されず、ものごとを自分でしっかり見極めて、自分がどう行動するかちゃんと考えろ」
劇的に変わる。
私たちはこれから、まだ学生ではあるけれど、大人として生きていくことになる。
自分の行動とその結果に責任を持たなければならなくなる代わりに、幅広く自由を認められる。
「俺はみんなに、とにかく幸せになってほしい。それだけが願いです」
これまでの幸福な人生は、親や友達、そして恋人に与えてもらっていたものだと思う。
私は己の力で幸せになって、他の誰かを幸せにすることができるだろうか。
担任の話は私を含むみんなの心に響いたようで、あちらこちらですすり泣く声が聞こえる。
今日でここを卒業するのだと、私もようやく実感できた。
それから私たちは一人ひとり教卓の前で挨拶をした。
みんなの話を聞いていると自然に涙が出て、別れが辛くなってくる。
体育祭の話をされると弱い。
攻めたデザインが認められたこと。
そのデザインで優勝できたこと。
準備中は教師である淳一が近くにいたこと。
そして、前夜祭で抱き締められたこと。
私にとって、最も濃い思い出だ。