翌朝、私は決まりの悪い気持ちで登校した。
教室に入ると、クラスメイトが「大丈夫?」、「もう体調は平気?」などと声をかけてくれた。
私は目立つタイプではないし、みんなにとっては“雄二の彼女”という以外、取るに足らない存在だと思っていた。
私はクラスメイトとしてちゃんと認識されていて、欠席が続けば心配してもらえるということが、とても嬉しい。
「さくら!」
茜は教室に入り私の存在を確認するなり、ものすごい勢いで走ってきた。
「茜、おはよう」
「おはよう!」
挨拶もそこそこに、私は茜に腕を掴まれ人気のない場所へと連れて行かれた。
「よかった! もう学校来ないんじゃないかと思ったよ」
「心配かけてごめん。奥田先生の事を聞くのが怖くてズル休みしてたの」
「そっか、それならいいんだ。本当は謹慎だったのかもとか思ってモヤモヤしてたよ」
「ないない。悪いようにはならなかったし、大丈夫」
茜はちょっと涙目になっていた。
淳一のことについて、一緒に秘密を抱えてくれている彼女には、感謝の言葉しかない。
教室に戻ると、雄二が登校していた。
雄二は昨夜私が眠る前に電話をくれた。
「さくら、おはよ」
同じく共に秘密を抱えてくれる優しい彼に、私は本当に救われていると思う。
「おはよう雄二。いろいろありがとね」
「好きな子のために何かしたいと思うのは当然だろ?」
彼がサラッと言ってのけたのを聞いていたクラスメイトから歓声があがる。
「ちょっ……ここ教室!」
「あはは。さくら、顔真っ赤だ」
こういうのには慣れないけれど、みんなに温かく迎えてもらえて安心した。
裏アカのことも、もう誰も気にしていないようだ。