「私、辞めるなんて許さないから。きっと奥田先生も」
背に受けた中野先生の言葉が心に刺さる。
私は蛇口を閉め、カップを水切り棚に置いた。
「わかってます。辞めません」
宣言と同時に5時間目終了のチャイムが鳴り響く。
怒ったような顔でコーヒーをすする彼女に「失礼します」と告げ、私は控え室を後にした。
休み時間のうちに教室に入った。
まだもう1時間ほど授業があるので、席に着き支度をする。
「さくら!」
「何の呼び出しだったの?」
茜と雄二が私を心配して駆け寄ってきてくれた。
私と淳一との関係を知る彼らには、放課後にでも話しておくべきだろう。
「あとで話すよ」
そう告げた私の声は震えてしまったし、二人には私が泣いたあとだということがバレている。
淳一との関係のことで何かあったのだということは、察しがついているに違いない。
「大丈夫か?」
雄二の問いに、私は上手に「うん」とは答えられなかった。
「心配かけてごめんね」