その日が来るのは案外早かった。

昼休み。

勢いよく教室のドアが開く音が、教室で昼食をとっていた生徒たちの注目を集めた。

「椿さん!」

血相を変えた顔で私を呼んだのは中野先生だ。

嫌な予感……いや、確信が体中を駆け巡る。

「はい」

「ちょっと来て」

とうとうこの時が来てしまったか。

「……わかりました」

私は静かに立ち上がり、教室を出る。

教室から離れ、渡り廊下を渡りきるまで、私たちは言葉を交わさなかった。

「最悪の事態よ」

先に言葉を発したのは中野先生の方だ。

「何があったんですか?」

「椿さんが奥田先生の部屋に入る動画が、学校のメールアドレスに送られてきたの」

「動画!?」

撮られていただなんて、全く気づかなかった。

もはや言い逃れなどできない。

運営者不明の裏アカウントに投稿されたのは根拠のない言葉だけで、唐突だし信憑性は乏しいと無視することができた。

だけど、映像が存在するとなれば事情が変わる。