淳一の部屋に行った日からしばらく経った。
季節は冬になろうとしている。
今にも呼び出されるのではないかとビクビクしていたが、今のところ、特に何もない。
中野先生が学校に報告しないでくれているのだろう。
秋も深まり、私たちの学年は寒くなるにつれて受験への熱がヒートアップしている。
近頃は土日でさえ模試だ補修だと満足に休みがない。
こんな状況では仕方ないとは思うのだが、誰と誰が別れたという話を耳にする機会が増えた。
体育最後のカップリングブームから間もないが、ブレイクアップブームの到来である。
「この程度のすれ違いで別れるなんて、そもそもその程度の関係だってことだよね」
茜は呆れたようにそう言った。
茜&拓也カップルは相変わらず仲がよく、たまにケンカもするけれど、すぐに仲直りする。
「茜たちほどの関係を築くのは難しいと思うよ?」
「そうかなぁ。普通に恋愛してるだけだけど」
「普通にできるのがすごいんだよ」
私たち高校生は、身体こそ大人と同じサイズだけど、心の方はまだまだ未熟で、相手を受け入れる器は小さいと思う。
恋人に理想を押し付けたり、幻滅したり、他の人がよく見えてしまったり。
そしてケンカしたり別れたりして、反省とともに成長していく。
「ところで、今日も他クラスの女子に、さくらと中山くんはまだ付き合ってるのかって聞かれたんだけど」
本当に失礼な話だが、このブームの煽りを受けて、私と雄二は一部の女子たちに別れを期待されている。
もちろん、彼女らの期待に応える気はない。
「……なんかごめん」