「できたよ。食べて。お薬出しておくね」
「うん……」
だるそうにベッドから出て、ローテーブルの前に腰を落とし、スープをすする。
できるだけ食べやすいようにしたつもりだが、飲み込むだけで喉が痛む状態では、多少マシというところか。
食べ終わりを見届け、薬を飲ませてベッドへ入らせる。
早くよくなってほしい。
「さくらだって早退したのに、世話ばっかしてもらって申し訳ないな」
そうだった。
私も生理痛が重くて早退したのだった。
薬が効いて痛みは引いていたし、淳一を助けるのに夢中で忘れていた。
「ううん。薬効いてるし」
「そうか。でも、あいつにバレたら怒られるな」
「あいつ?」
「中山」
「ああ……」
二人の間ではデーティングの関係だが、対外的には付き合っていることにしている。
それが淳一の耳にも入っていたようだ。
心変わりOKの関係とはいえ、このことを雄二が知ったら、きっと悲しい顔をするだろう。
でもたぶん、口では「いいよ」と言うに違いない。
胸が鈍く痛む。
「じゅんも、彼女いるんだって?」
「いないよ」
「……嘘ばっか。下級生が噂してたよ。告白してきた子に彼女いるって言ったらしいじゃん」
重くならないよう、ヘラッと笑って見せる。
淳一は変わらぬ表情のまま答えた。
「ああ……。あれは、いるってことにしただけ」
「……なにそれ」
彼女、いないんだ。
中野先生との噂はガセだった。