「ぅおえっ……」
喉に触れられる不快感に耐える淳一の声に、思わず体が固くなる。
早く治すためだ。
頑張ってもらうしかない。
その後は治療室へと移り、注射と点滴を受けることになった。
「ちょっと痛いですけど、頑張りましょうね」
看護師の女性が注射器片手に微笑む。
すると淳一は、急に目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待って。それ筋注ちゃう?」
筋注、つまり筋肉注射だ。
「そうですよ」
「めっちゃ痛いやつやん」
「うふふ、よくご存知ですね」
淳一の顔がますます青くなる。
どうやら注射は苦手だったようだ。
「あああ……痛いの嫌や……喉痛いのも嫌やけど、注射も嫌や……」
まるで小学生の男の子。
こんなにカッコ悪い淳一を見るのは初めてで、私は部屋の隅で声を殺しながらクスクス笑う。
「大丈夫ですよ、すぐ済みますから」
「痛くならへん裏技とかないん?」
「残念ながら、ないですね」
結局淳一は注射の前に約3分、点滴の針を指すまでに約5分駄々をこねて、ようやく針を受け入れたのだった。