名前、生年月日、年齢、性別。
それから住所、電話番号。
「じゅん、住所と電話番号は?」
喉を痛めていて喋る気力がないのか、私からボールペンと問診票を受け取り、自分で住所と電話番号を記入した。
しかしそれだけでもしんどかったのか、書き終わるなり私にペンを突き返す。
続きは私に書いてほしいということだろう。
「喉が痛いんだよね?」
淳一が軽く頷く。
「頭も痛い?」
今度は首を軽く振る。
こんな調子で項目を埋めていると、体温計が鳴った。
表示されていた数値に、私は思わず「うわ」と声をあげてしまった。
『40.3℃』
そう問診表へ記入し、体温計と一緒に受付の女性に提出。
ひどい高熱のため苦しそうな淳一は、先ほど駅でしていたように、膝に肘をつき頭を抱えている。
「奥田さーん。どうぞ」
若い看護師に呼ばれたのは、それから20分ほど後だった。
私はあまりに彼が心配で、一緒に病室について行く。
担当医は私の父の同世代くらいのおじさんだった。
「はい、口開けてー。ありゃりゃ、こりゃ酷いね」
医師はなにやら薬の名前を看護師に告げ、準備をさせた。
長い金属の棒にコットンのようなものが巻き付けてあり、茶色の液体が染み込ませてある。
「喉に直接薬を塗りますね。よく効くから頑張って」
そして再び淳一に口を開けさせ、薬のついた棒をそのまま淳一の口に突っ込んだ。