マフラーが手放せなくなった11月下旬。

この日、私は重い生理痛に悩まされていた。

病気ではないし、大っぴらに症状を訴えることもできず堪えていたのだけれど、私の顔色は相当よくなかったらしい。

あまり話さない隣の席の男子にまでこう言われてしまった。

「椿さん、無理しないで保健室行ったら?」

彼の言葉に頷き、保健室へ。

女性の養護教諭に症状を訴えると、ゆったりできるひとり掛けのソファーに座るよう言われ、それに従う。

「市販の鎮痛剤ならあるけど、飲む?」

「はい。いただきます」

「効くまでしばらく寝てもいいし、あんまりつらいなら帰る?」

「いえ、受験前だし授業は受けたいです」

薬を服用し、先生にお礼を言って教室へと戻った。

しかし、痛みはいっこうに軽くならず。

「さくら、もう帰ったほうがいいよ」

「今日一日くらい早退しても大丈夫だって」

茜と雄二に早退を勧められ、今日は大人しく帰ることにした。

家族に迎えを頼むかと尋ねられたが、それは断った。

父も母も仕事で忙しいのに、たかだか生理痛のために呼び出すのは忍びない。

駅までの道を、痛みに堪えながらゆっくり歩いた。

するとだんだん薬が効いてきて、駅に着いた頃にはかなり楽になっていた。

学校へ戻ることも考えたが、ここまで来ると面倒になって、素直にこのまま帰宅することにする。