「よっ」
なんでもないように笑い、片手を上げる淳一。
「こんにちは」
私は軽く頭を下げ、笑って彼とすれ違う。
一秒後、追い風とともに彼の匂いが届いた。
鈍く胸が痛む。
もう少し長く、あなたとの恋を楽しみたかった。
この気持ちが未練となり、叶わなかった切なさは今でも痛みを伴いぶり返す。
でも、もう大丈夫だ。
私たちはうまく演じられている。
私は雄二と、そして淳一は中野先生と。
新しいパートナーを得て、より健全に学園生活を過ごすことができるはずだ。
私と雄二は逃げ道のあるゆるい関係だけれど、噂話を受け入れられるのは間違いなく彼のおかげだと思う。
私は淳一以外の人を愛せる。
淳一以外の人も、私を愛してくれる。
だから、淳一と離れてしまっても幸せになれる。
それがわかったことは、精神的に大きい。
卒業まで、あと半年弱。
このまま平穏に過ごせますように……。