雄二との関係は良好なのだが、実は困ったことも起きている。
同じ学年の女子に、嫌な呼び出しを受けるのだ。
「椿さん、ちょっといいかな?」
ほら、今日も。
これで4度目になるだろうか。
今日呼ばれたのは、顔だけ知っている文系クラスの女子ふたりだ。
ほとんど話したこともない人たちに、人気のない場所に連れていかれるのは怖い。
「突然どうしたの?」
用件はだいたいわかっているが、あえてなにもわからないフリをする。
ふたりは汚いものを見るような目で私を眺め、尋ねた。
「椿さん、中山くんと付き合ってるの?」
……やっぱり。
私は内心うんざりしながら、軽くため息をつく。
女子に呼び出されるときは、必ず雄二の件だ。
ふたりのうちどちらか、あるいは両方ともが、雄二に気があるのだろう。
「付き合ってるけど」
私たちは否定しないことにしているから、素直に頷いておく。
「……ふーん、そうなんだ。わかった」
特に恨み言や妬み嫉みをぶつけられるわけでもなく、羨ましいと言われるわけでもなく、ただ嫌な顔を見せられ開放される。
その行動が謎だ。
心が疲れるからやめてほしい。
雄二がモテるのは承知していたけれど、このようなことが続くと、いつか私を妬む女子に刺されたりするのではと不安になる。
……そう話したら、雄二には「大袈裟だよ」と爆笑されてしまったけれど。