横浜には秋が訪れている。
涼しくなって木々の紅葉が始まり、私たちの制服も長袖になった。
もうあの夏服を着ることは一生ないのだろう。
私と雄二は、受験勉強に精を出しながら、できるだけ長く一緒に過ごすようにしている。
手を繋いで歩くこともあるし、抱き合うこともある。
この間はキスもしたし、それ以上のことも、した。
淳一への未練が邪魔して、雄二とそういうことはできないかもしれないと不安だったけれど、杞憂だった。
なんとなくだけれど、私は淳一でないと幸せになれないのではないか、そして淳一以外の男を愛せないのではないかと思っていた。
そうではないということを、雄二は見事に証明してくれた。
「椿さくらと中山雄二が付き合っている」
もちろん校内ではこのような噂も囁かれるし、私たちはそれを否定しないことにしている。
気持ちを拘束する「恋人」まではいかない、恋人未満の「デーティング」関係。
それを「付き合っている」というのなら、間違ってはいないと思う。
「そこまでしてるんだったら、もう普通に彼氏彼女ってことでいいじゃない」
私たちの真実を知る茜はそう不満げに言うのだが、
「俺たちのペースがあるんだよ」
と雄二に言われて黙るのだった。