「えー、赤組の団旗監督になった奥田です。よろしく」
「はーい! よろしくお願いします!」
メンバーがふたたび歓声をあげる。
……なんということだろう。
やっぱり神様は私に意地悪だ。
茜もさぞかし喜んでいることだろう……と思ったのだが、彼女の表情は渋く、彼を歓迎している様子はない。
「え、なんでそんな嫌そうなの」
茜の不機嫌さを察知した淳一がおどける。
茜はいつになく冷たく答えた。
「……別に」
この場のリーダーシップをとっていた茜の低い声で、教室内の空気が凍る。
それを取り繕うように、メンバーが話し合いを再開した。
「他に赤といったら何かな?」
「血とか?」
「体育祭なのに、ケガしそうで縁起悪いだろ」
茜はわかりやすいほどにおっくんファンだったはずだ。
彼と何かあったのだろうか。
茜は何事もなかったように話し合いを仕切り、淳一は椅子に座って私たちの様子を眺めた。
しばらくして、メンンバーのうちの一人が淳一を指名した。
「ねーおっくん。赤といえば何だと思う?」
メンバーの期待に満ちた視線が彼に刺さる。
「えー、俺?」
「何か出してよ。モチーフになりそうなやつ」
「うーん。モチーフになるかはわかんねーけど、俺的に赤といえばリンゴかな」