「あ、だれか来たみたいや。心春出て来てな。」



おばあちゃんは、また優しく笑うと、玄関がある方角に目を向けた。

あたしはそれに頷くと、炬燵から体をひっぱりだし、玄関へ向かう。



「どちらさ・・・あ、なんだ。リキか。」
「俺じゃアカンのか。喜べ、わざわざ迎えに来てやったん」


扉を開けると、寒そうに肩をすくめたリキがいつもの如く不機嫌面で立っていた。



「迎えに・・・って、なんで?」
「とりあえず、ついて来い」



行き場所も、理由も何も教えてくれないリキ。

あたしはおばあちゃんに一声かけると、すぐにマフラーと上着を取ってブーツを履く。そしてリキの後に続いて外に出た。

…昔も、こんな風にリキの後ろを歩いてたのかな。





「ここ。」




リキは足を止めて振り返ると自分の隣を指差して言った。


隣に来いって意味…?


あたしが悩んでいると、またリキは前を向いて歩きだした。

…もう、本当にせっかちなんだから。


あたしは少し早足に隣へ行き、リキの顔を覗き込む。


「…お前歩くの遅いわ」


そう呟くように言ったリキの耳が赤くなっているのに気付いた。