「噂される原因があったから、あの子も辛い想いしてたん」
「…原因?」


ばあちゃんは目を伏せ、静かに言った。


「あの子、孤児やったん」
「・・・そんな事聞いたことない」
「そうやろ。あの子が一番嫌ったんわ、この街に記憶された自分の過去やった」

知らなかった。
おばあちゃんと母も血の繋がりのない親子だったなんて。


「歩く度後ろ指差されてる気がしてたんやろ。早くこの街から出たがっとった」


あたしはおばあちゃんも好きだし隣の家の江夏さんもすっごく優しくて好き。

息子はすこし意地悪だけど、優しいとこもあるし・・・。

だからこの街が嫌いなわけじゃないけど母が出て行きたくなる気持ちも少しは分かる。

きっと街の人から優しくされても同情だと受け止めてしまうんだと思う。

あの子は可哀想だから、
あの子は不憫だから、
なんてプライドの高い母には耐えれないだろう。