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微かな湯気が彼の鼻孔を捉えた。
香りとまでも言えない、柔らかな湯気。
湯気の気配。



──アルデンテ…


彼はひどく懐かしい響きを持つ言葉を、声に出さず呟いた。


空腹ではなかったが、彼は誘蛾灯に魅せられた羽虫のように、とある店へと引き寄せられた。