あのガメツい欲たかりの大家が言うのだから、多分間違いはないのだろう。
宿替えは回避され、スエ子があの性悪なヨメのいるアマの貧相なマンションに引っ越さねばならぬ必然性は消えた。


大阪が潰れることで…



──兄ちゃん、まさかアンタが…



街は解体されても、空の色は変わらない。
もっさりした垢抜けないこの街独特の空気も。
この空の下のどこかに、あの青年はいるのだろうか。
スエ子は空を仰ぎ呟いた。


──おおきに兄ちゃん


スエ子の変わらない日常が動き始めた。




    【完】