『アンタ聞いたか?キタもミナミもワヤになってもたらしいで?』
『ここらはべっちょないやん。通天閣さんかて傾いてへんやん。』
『そやけど、いったいどないなってんのやろ?』
『そやそや。不思議やんなあ。チャックついとんやろ?』
『そやてなあ…何やあやしげーなチャック見ても、触ったアカンて孫が学校から手紙持ってきとったわ。』


被害を免れた飛田エレガンス商店街では、いつもと同じ喧騒の中、一夜にして街が解体された事件についての様々な憶測が飛び交っていた。


カッサンドラ洋品店の激安原色スパッツのワゴンの前で、西谷スエ子は独り昨夜のおかっぱの青年のことを思い出していた。