「そーらっ♪」

名前をよばれたあたしは声のした方、後ろを振り向いた。そこには、黒いサラサラの髪を軽く靡かせながら走ってくる親友の姿があった。



「おはよう愛美。今日は雅稀と一緒じゃないの?」

「それがさー、雅稀ってば酷いんだよ!?」



隣に来るや否や、すぐに愚痴をしはじめる。彼女の名前は早川 愛美。幼稚園からの友達で約12年間の幼なじみ。


そして愛美の彼氏、大沼雅稀もあたし達と同じ幼なじみの一人。




「・・で、雅稀ってば部活ばっかり優先して・・・」

「まぁまぁ、雅稀も甲子園が近いんだし見守ってあげて・・・」

「だからって記念日の約束ほっぽる!?しかも当日に『ごめん、眠いから今日はやっぱり無しにして』だよ!?むかつくー!!」

「・・・・」




それから教室につくまでの間、あたしはずっと愛美の愚痴を聞いていたのだ。