あんなにも躊躇(ためら)った時間が、とても無駄だった。


家までのこの道のり、驚くほど何もなかった。



私は安堵のため息を漏らした。


そして思った。





本当にただの夢だったのだ、と。



「ただいまー」


家の中に入ると、いつもと違い、何だか騒がしかった。


リビングに足を踏み入れた瞬間、お母さんがいきなり話しかけてきた。



「お帰り美由。突然だけど、私と祐二、しばらくお父さんのところに行くから」