いつも通りの、普通の日常。
そんな普通の日々が、初めて幸せだと思えた。
あの恐ろしい吸血鬼なんかの姫になどならなくてもいいんだ。
少し、嫌な夢を見てしまっただけ。
ただそれだけのことなのに、こんなに嬉しいだなんて。
なんだか変な感じ。
やっぱり吸血鬼なんてものは、この世には存在しない。
物語の中だけの世界。
「美由、おはよう」
後ろから肩を叩かれたので振り返ってみると、親友の野川 奈津が(のがわ なつ)が私に微笑み掛けていた。
奈津とは小学校の頃からの友達だった。
そんな奈津と教室まで他愛のない話をしながら向かった。
もう、吸血鬼が出てきた今日の夢のことなど、綺麗に忘れていた。