「牢屋…、そんな所に用事あるの?そういえば初めて見た時は、水あげてたけど」

そうこぼした黒麗に、白夜は視線を上げる。


「おとなしくしていれば、いいものを…」

ため息と同時に、どこか仕方がないといった風を見せる。


「後宮に閉じ込めたい?だったら僕が貰うよ?」

「そんな事は言ってない」
「ま、きみは独占欲の塊みたいだから」

からかう様に告げられる、栄達は、なにか考えるように思案しているのが見て取れた。


「…わるいか?俺にはあいつしかいない…ずっと待っていたんだ」

この世界に落とされるのを、長い長い人生で…初めて手を繋いだ少女を。


初めて心の奥底を見抜かれた少女を、ずっと待っていた。



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