メモをしながら、黒麗を観察してみる。


様々な目の色があり、身分がある。


日本人の私には理解しがたい事。


この世界を変えるのなら、まず…身分制度をどうにかしなくてはならない。


ただ一朝一夕にはいかない、学校で習った知識しかない。


支配するには、新たな目に見える憎しみを作る事、それがひとつに纏める為に簡単だからだ。


その位しか勉強しなかった自分に腹がたつ、これは黒麗に聞く訳にはいかない。


黒麗も特権階級だからだ。


「黒麗さま…赤の薔薇、ありがとうございました」

そう礼を言いカマをかけてみる、陛下の最初の言葉「犯されて身篭らせられているだけ」そして「後宮には女性がいる」さらには、最初から私を月妃だと知っていた。


テレビがある訳ではないので、私の顔は知らないはずだ。


「…何の事かな?薔薇が欲しいの…?」


一瞬の間があくが、取り繕う。
今の黒麗の姿が、真実でなかったら?


考えるだけで恐ろしいが、あっちの方でないとわかっただけ収穫があった。


「左様でございましたか」

申し訳ありませんと謝る彩の言葉に、怪訝な表情を見せる。


0.1秒にも満たない、微かな時間。


この人もか…。


栄達に騙された事で、彩は慎重になった。
あんな男だと見抜けなかった自分に、二度目はないと言い聞かせる。


「薔薇がどうしたの?」

「いいえ、黒麗さまの綺麗な御髪は、何か特別な事を?」

「…この髪を綺麗なんていうのは、君くらいのものだよ?」

そう言って、白い瞳が濁ったように見えた。


この髪…?
白に一滴だけ金を垂らした、足首まで伸びる髪がだろうか。


嫌なら短く切るはずだし、だとしたらこの飽きれる程長い髪の毛は、何のためだろう?と彩は思う。

まるで、自分に自覚を促す様に………自覚?


「戒めですか」

ビクリと震える肩に、彩は驚く。



.