「黒麗さま、私の道具としての価値は、子を成す以外に何かありますか?」

数人のお付きが付き、彩達は隣へ歩く。


「ん…?これから作っていくんだよ」

「これから…」

引き扉を開け、先に黒麗さまを中に入れる。


「来たばかりでしょ、彩は…才能はあるし」

「来たばかり…」

今まで誰も言ってくれなかった言葉。
当たり前である、この世界を栄えさせる月妃である彩の存在。


だからこそ何も出来ない事などないのだ。
そう思われる。


しかし…それでもある侮りや侮辱に、対する抵抗力などない。
これはなんでも出来るはずの月妃が何もできないためにおこる事でもある。


「黒麗さま、私なにもできません。なのに、月妃など呼ばれています。このままでいいのでしょうか」

「それを当たり前としないだけ、彩には魅力あるよ?」

「当たり前としない…」


黒麗は腕を広げ、彩はメジャーをあてながら考える。

この手狭な部屋には、黒麗と彩だけ。


薄布一枚な姿や上半身裸を他人を見せるのは嫌だと、きっぱり言われた。


黒麗は、付きの人は極少数で龍国に来たみたいで、よくひとりでプラプラしている。


手をはかる時に、手を取った黒麗さまの手は、陛下のように皮が厚く、タコや細かい切り傷があった。


つまり…あれだ、王族の嗜みという事だ。
こんな中性的なのに…剣を当たり前のように、それこそ嗜みの世界なのだ。


本当にとんでもない所に来てしまった。


剣といえば、剣道くらいで普通の人は触らない。
剣道をしていても、竹刀で精一杯だ。


「黒麗さまも、剣使われるんですね」

その言葉に変な顔をする、黒麗…。


「手が…陛下の手と一緒です」

綺麗に陛下より手入れはされているが、やはりタコは消せない。


それにこんな世界だ、剣が使えても不思議はない。


「やはり頭のいい子だ。美しい…」

頭のいいと美しいが結びつかなかったが、笑っておいた。



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