「おはぁ」

けだるい声を、朱美はあくびと共に出した。


何時もとなんら変わり無い景色。


朱美の瞳に映るのは、愛しい愛しいひと。



「おはよう。」

そう呟き、目を細めるのは「トーイ」。


トーイは、引き締まった筋肉のついた腕を伸ばすと、煙草を取り、火をつけた。


「トーイは、いつも朝起きると、先ずは煙草だよね。煙草なんてどこがいいのさ。所詮、葉っぱを巻いただけの物じゃないか。」



トーイは、たっぷり煙りを肺に入れ、ゆっくりと窓の開けた隙間に煙りを吐いた。


夏の湿った風に流された煙りを、朱美とトーイは黙って眺めた。


「朱美でいう、チョコレートみたいなもんだよ。」


トーイは淡々とマイペースを守った。




「ふぅん。」 

朱美は生半可な返事をし、小さな冷蔵庫からチョコバーを取りかじった。



「うめぇな。こりゃアタシ、やめらんね。」