「くぉらっ!答えろ!これじゃ朱美の独り言じゃないか!!」


相変わらず沈黙するギターに対し、朱美は更に罵倒を浴びせる。


「シカトすると、首を締め上げるぞ!」


朱美はおもむろに、ギターのネックを掴み、天井に向かって、高々と掲げた。


その時微かに弦に触れた為、ボーンと鈍い音をたてた。


「やっと答えたか。宜しい。許してやろう。」


そのままギターを、ベッドに寝かせた。


朱美も隣に寝転び、天井を仰いだ。

「今眠ったら、息が詰まって死ぬかもしれない。」

目を綴じる前に、必ず不吉な事を頭に浮かべてみる。


絶対次の日、目が覚めるからだ。


死ぬ訳が無い。


誰しもが思う。
「自分は大丈夫」といった妙な安心感。


当然、朱美にもある安心感。


だからこそ、朱美は意地悪く「死」を連想してみる。


馬鹿げているんだ。

わかってるから、黙ってて。