トゥルルルルル… トゥルルルルルル… ガチャッ


「はい・・・」


その声を聞いて オレは樹花の母親だとすぐに分かった


「僕です!ヒカルです!樹花さんが意識を失って

今病院で検査してもらっているんですけど…」


「樹花が?!」


樹花の母親は 慌てた様子だった

しかし すぐ


「ヒカルくん!そこの病院の電話番号分かるかしら!」


「ちょっと待って下さい 今訊きますから」


オレは 受付の女性に この病院の電話番号を確認し 樹花の母親に伝えた


「有り難うヒカルくん 知らせてくれて・・・

でも ちょっとこの電話切るわね そちらの病院にかけ直さないと・・・」


気が動転していて オレは最初 樹花の母親の言っている意味が分からなかった

少し落ち着いてから

樹花が今回倒れたことに 『思い当たる事がある』のだということが呑み込めた

樹花の母親が 病院に電話したであろう時間から約15分ほどで 樹花は処置室から出てきた

ストレッチャーに乗せられて まだ 意識は戻っていないようだ

顔には酸素マスクが かけられている


オレは 坂本が手術室から出てきた時のことを思い出した


「5階の503号室に移動します」


ストレッチャーを引いていた 看護師の1人が 事務的にオレにそう伝えた

エレベーターで5階へ移動し 部屋に入ると 2人部屋のようだったが

もう1つのベッドには 誰も居なかった

看護師たちは 樹花をベッドに寝かせると 


「ご家族の方は あとどのくらいでお見えですか?」


と尋ねてきた


「多分・・・1時間くらいだと思います・・・」


同棲しているとはいえ『家族』といわれ


「オレは家族です」


と胸を張って言えるようなことを オレは 樹花にしてきてはいなかった