「なぁ、瑞樹くん。もう1度、星羅のことを考えてはくれないか?君のお父さんとは昔から仲がいい。君と星羅が結婚すればお互いの会社の仲も上手くいく」
星羅の父親はテーブルの上で手を組んで、少し乗り出す格好で言った。
「俺と星羅は許婚ではないんです。ただの彼氏彼女の関係だったんです」
「………」
何も言わない星羅の父親。
「何と言われようと、俺は星羅と寄りを戻すつもりはありません」
「君はそれで本当にいいのか?」
何だよ……ったく!
俺の親父の会社のことを出せば、俺が首を縦に振るとでも思ったのかよ。
俺は財布から1000円出してテーブルの上に置いた。
そして椅子から立ち上がると、
「はい。星羅とは2度と会うつもりはありません。それから親父の会社をどうするのは勝手ですが、俺は親父の会社とは無関係の人間ですので」
と、言ってやった。
星羅の父親の眉毛が“ピクッ”と動いた。
でも何も言い返してはこなかった。
「これで失礼します」
俺は会釈をすると喫茶店を後にした。
―瑞樹Side end―