日山中学3年2組。



まだ、肌寒い、4月上旬。


3年に成り立てのあたしは、誰もいない教室で、一人、本を読んでいた。



まだ、登校時間より、15分も早い。


でもこの時間が、1番落ち着くんだ。


あなたに会う前の、心の準備体操。



あたしが、世界で、たった一人愛したのは、幼なじみの女の子でした………。





7時55分。


あたしは、本をパタンと 閉じた。


この時間になると、あたしは、本を読むのをやめ、窓の外を見る。




そこには、元気よく登校する生徒たち。


それにまぢっている、あたしの大好きな人。


そして、数分すると、廊下から、足音がする。




足音は、あたしのいる教室の前で止まる。


《ガラガラ》


ドアを開けたのは、あたしの大好きな人。


「おはよ〜!今日も、茜、早いね!!」


「おはよう。希美。」



福谷 希美(ふくたに のぞみ)。


あたしが、世界で、たった一人、愛せる人。





別に、男が嫌いってわけじゃない。



ただ、あたしは、男になりたかったんだ………。



だから、あたしは、希美しか、愛せない。



でも、他の女を好きになった事はない。



あたしは、希美しか、一人の女として愛せないから………。


「茜!!今日、消しゴム忘れてたから貸して!!」


「はい、はい。」


あたしは、笑いながら言う。




「ありがと!!茜〜!大好きだよ〜♪」


そんな事言わないでほしい。



希美の笑顔を見ると、もっと好きになってしまうから………。



ザワザワし始めたあたしたちのクラス。


《キーンコーンカーンコーン》


予鈴が鳴り、HRが始まる。


『出席とるぞ〜。え〜、上原茜!』


「はい」


3年2組。


上原 茜(うえはら あかね)。


ソフトボール部、キャプテン。


友達、中田恵(なかためぐみ)。
本条麗奈(ほんじょうれな)。






幼なじみの、福谷希美。


そして、あたしの好きな人。



それは、親友の、希美。


なんで、あたしは、女に生まれたんだろう。


あたしは、男になって、正々堂々、希美が好きって言いたかった。



あなたが、好きって…………。


「あか〜!次、移動教室だよ〜。」


「今行く!」


今、あたしの事を、あかと呼んだのは、麗奈。


麗奈は、凄い優しくて、友達思い。


でも、自由人だから、あわせるのが、大変なんだ。