そう言って私の頭を撫でたかと思うと、春樹さんは不意に真剣な表情を覗かせ、「だから」と口にする。


そして。


「だから――好きになったんだよ」

私を見つめてポツリと呟いた。


唐突過ぎるその言葉に、一瞬だけ呼吸が止まった――ような気がした。


「正直、自分でも驚いてる」

少し低めのハスキーボイスが囁くのは。


「今まで一目惚れとかした事なかったし、考えるよりも先に体が動くっていう事もなかった」

綺麗な顔で、気恥ずかしそうに紡ぐのは。


「そのくらい――抑えがきかなくなるくらい人を好きになるなんて、生まれて初めてなんだ」


――…私にとっても“生まれて初めて”の、真っ直ぐな告白。