勿論よく一緒に居る二人を見てそのような憶測も飛び交った。

二人はお付き合いしているの?

他愛ない女生徒の好奇心を葉月はいつも一蹴した。しかし彩己はというと、どうだろうねえ、とはぐらかしはっきりしない。それがまた皆の興味を引いた。掴み所のない彩己の人気は益々上がり、遂には恋文を手渡す女生徒も出てくる始末。仲介役を頼まれたのは一度や二度ではない。

葉月は彩己に引け目を感じると云うことはなかったが、何故自分なんかと一緒に居るのだろうとは常々思っていた。

彩己の父はここらの地主でとても大きなお屋敷に住んでいた。おまけに彩己自身眉目秀麗であり文武両道に長けた好青年である。全てに恵まれた彩己が何故、自分の手を引いてくれるのだろうか。