その日、葉月が家に帰ると母が突然の来客にぱたぱたと駆け回っていた。何事かと思い客間を盗み見る。知らない男が端座していた。線が細く端正な顔立ちに涼しげな目元。眼鏡をかけているから余計に凜とした印象を受ける。男は葉月に気づいて口角を微かに上げた。葉月はどぎまぎしてしまって、慌てて顔を引っ込めた。

それが晶人(あきひと)との出会いだった。

彼は昔もその後も変わらず、儚い蜻蛉のようなひとだった。