部屋からは、なんの反応もない。おれの声は、拓馬に届いているのだろうか。


「頼むよ、拓馬。連絡をしてあげるだけでもいいから」


「麗華を幸せにするのは、拓海の仕事だろう」


 小さな声が、扉の向こう側から聞こえてきた。


「僕には何も出来ないよ。勝負に負けたのだから。僕に麗華を守ることは出来ない」


「無責任なこと言うなよ! 拓馬、おまえそれでいいのか? 麗華と付き合ってるんだろ?」


「それはこちらの台詞だよ。麗華を幸せに出来るのは、拓海だけなのだよ」


 それきり、おれがなにを話しかけても、拓馬は反応しなかった。

拓馬の意志は固い。拓馬に動いてもらうのは無理だろう。

結局、おれがなんとかするしかなくなってしまったんだ。