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 夜の7時、おれは拓馬の部屋の扉を叩いた。

隙間から明かりがもれていないので、部屋の明かりはついていないのだろう。

それでも、中にはいるはずだ。


「拓馬、聞こえるか? 開けてくれなくてもいい。このままでいいから聞いてくれ」


 おれは呼吸を整え、扉に向かって話しかける。


「北村さん、大変なことになってるぞ。おまえが学校へこなくなったからだ。なあ、連絡だけでもしてあげてくれないか? 頼むよ」


 おれは結局、拓馬に頼るという結論しか出せなかった。

しかたない。おれの力ではどうにもならなかったんだから。


「このままだと、北村さんはいじめに遭うかもしれない。いや、もういじめに遭っていると言ってもいいくらいだ。守れるのは拓馬しかいないんだよ」